名嘉睦稔さん木版画展『海山神謡 山の神』画業30周年記念へ
めぐり合わせ
目次
2017年10月27日(金)~11月5日(日) まで東京の「Island Gallery (アイランドギャラリー)」で開催されていた名嘉睦稔(なかぼくねん)さん木版画展『海山神謡 山の神』画業30周年記念。初期から最新作までの選りすぐり25点程を展示販売される機会に足を運びました。この記事では、なぜ写真作家の筆者が木版画家の個展へ訪れることになったのか、名嘉睦稔さんの魅力と共にご紹介いたします。
物語はバックヤードから
筆者は2014年に初めてIsland Galleryさんへ訪れました。2015年にはご縁が生まれ東京駅から徒歩5分。これぞ東京という立地に構える都内のギャラリーで作品を飾って頂ける機会に恵まれました。それから私が訪れる度にバックヤードへご招待して頂けるようになったのです。
ギャラリーオーナーからの「ふたみんの写真いつも見ているよ。酔っぱらいながら+1している場合もあるからどれを押されたとか気にしないでね」と笑いながらお伝えくださった事が印象に強く残っています。当時のただの写真好きの普通の兄ちゃんに対しても、飾らずに真っ直ぐにお伝え頂けることがとても嬉しかったのです。
心踊る帰り道に
何度かIsland Galleryさんへ訪れるようになっていた時、八重洲に向かうギャラリーからの夕暮れ時の帰り道は、いつも心が晴れ晴れしていることに気が付きました。いつからか自然とギャラリーオーナーの人間性にも魅力を感じるようになっていたのです。その度に取材の様にご質問をさせて頂いてきました。
「なぜ石島さんはギャラリーを立ち上げられたのですか?」「なぜSNS出身の写真家に注目されているのですか?」「僕は写真について○○と考えていますが石島さんのお考えをお聞かせ頂ければ嬉しいです」と。オーナーは全ての質問にいつもユーモアを持ってお答えくださいました。
人生の先人・アートフォトの先駆者・同じ男同士として
「僕はね名嘉睦稔さんに惚れたんだ。1994年からボクネンズアート東京として名嘉睦稔さんをプロデュースさせて貰いたいと感じたから都内にお店を構えたんだよ」と。
そのお考えをお聞かせ頂けた時から、1人のアーティストに心がときいめいてオーガナイザーとして作家を世に広めたいと苦楽を共にし、行動に移されてきたギャラリーオーナーの人生に、ほんの少しでも触れさせて頂くことができたと感じられたのです。
「ふたみんも本物のアーティストである名嘉睦稔さんの作品を見に来てね」と伝えられていました。人生の先人・アートフォトの先駆者として、同じ男同士としても惹かれる方が惚れた作家の世界観に触れてゆきたいと考えていたのです。
個展概要
「ちりあくたにも神様が宿っているんだよ」とおばあから言われて育った。海上から来訪するニーラン神、天界から降臨するオボッ神、そして祖神。存在する空間の万物には霊力( せじ)が宿り、これらが神の存在となり人間と共生すると考えたのでは。神様が充満していますよね、この世は・・・。名嘉睦稔
名嘉睦稔画業30周年を記念し、今年の7月に前期『海の神』、そして10月27日からは後期『山の神』が開催されます。初期から最新作までの選りすぐり25点程を展示販売いたします。なお会期中には作家来廊サイン会もあります。みなさまの、ご来廊をお待ちしています。
木版画家 名嘉睦稔
1953年沖縄県伊是名島生まれ。大自然に育まれた豊かな感性を持つアーティスト。その版画作品は、裏手彩色と呼ばれる技法で制作される。まず版木に向かって祈り、墨で下絵とは言えない程度の「あたり」をつける。そして祈りの中に見えてきた イメージを一気呵成に版木に彫り込む。 彫りが終わると、月桃紙(月桃という沖縄の植物を原材料にした紙)に墨色を摺り、最後に紙を裏返して鮮やかな色彩を 一気につけて作品は完成する。
そのダイナミックかつ繊細な表現による作品群は、われわれ現代人が見過ごしてしまいがちな大自然の機微、生きとし生けるものの魂の声を、時に優しく、時に力強く、私達に伝えてくれる。また、その類稀な才能はとど まるところを知らず、彫刻、琉歌、作詞、作曲など様々な分野で日々旺盛に発揮されている。
プロフィール
会期
会 期 2017年10月27日(金)-11月5日(日)
会 場 Island Gallery
東京都中央区京橋1-5-5 B1
03-3517-2125
入場無料 会期中無休
作家在廊&サイン会
11月3日(金) 16-18時30分
11月4日(土) 13-15時・16-18時30分
アクセス
美術品としての版画とアートフォト
写真は目の前に見える情景を切り取ります。その中で記録したり自己を表現します。例えば、薄い霧がかかる里山の原風景を届けたいと考えた場合には、ロケーションを選び自らが足を運んで撮影しに行く必要があります。
絵画や水墨画の場合には真っ白なキャンパスに好きな情景を描くことができます。日本南画院展覧に訪れたことで、写真家の作品は自分の感覚に響く被写体を知り探すことが不可欠であり、絵画や水墨画の場合には、作者が美しいと思う物を描く事(具現化)することが必要不可欠な表現方法と感じることができました。
最後に
名嘉睦稔さんの壮大な版画の世界に直接触れ豊かな時間を過ごし、ギャラリーオーナーである石島さんはわざわざお忙しい中、私の為に時間を作ってくださりアートフォトについて色々とご教授くださりました。それはとてもありがたいことですね。
私などとは比べ物にならない、30年間もの作家活動を行ってきた名嘉睦稔さんに対し、「写真家の二見さんと言います。良い写真を撮る作家です是非、一緒に写真を撮ってあげてください」と伝えてくださったのです。 名嘉睦稔さんと互いに笑顔で撮影して頂けた際には、「ふたみん固いよ!もっと気楽に笑顔で」といじって頂けたのも光栄で貴重な思い出となりました。
いつかかけて頂いたお言葉の「ふたみん、写真が上手な人はたくさんいるけれど、写真以上にもっと大事なのは人間性だからね。これからも大切にしてね」という本質は名嘉睦稔さんの接遇から深く理解することができました。
さらには、写真を楽しむユーザーに向けてアートフォトにどのように向き合ってゆけばよいかを記事にして届けたくなったのです。私自身も名嘉睦稔さんの様に、今後30年間は楽しみながら作家活動を続けていきたいと考えることができた1日となりました。