国立新美術館 / 第56回日本南画院展覧(東洋美術の精粋水墨・墨彩画)へ
東洋美術の精粋水墨・墨彩画
目次
2016年3月27日。国立新美術館(六本木)で開催されている日本南画院展へ向かいました。公益社団法人 日本南画院は現在、会員数1,500名の日本最大の水墨画団体です。写真作家として自分の心に響く情景を写真で撮るのと、水墨画として描くのではどのような違いや共通点があるのだろうという問いを解決したく訪れました。
写真と水墨画の違いを考察
写真は目の前に見える情景を切り取ります。その中で記録したり自己を表現します。例えば、薄い霧がかかる里山の原風景を届けたいと考えた場合には、ロケーションを選び自らが足を運んで撮影しに行く必要があります。
絵画や水墨画の場合には真っ白なキャンパスに好きな情景を描くことができます。日本南画院展覧に訪れたことで、写真家の作品は自分の感覚に響く被写体を知り探すことが不可欠であり、絵画や水墨画の場合には、作者が美しいと思う物を描く事(具現化)することが必要不可欠な表現方法と感じることができました。
レンズを通し見える世界と肉眼で見える世界
レンズの特性や焦点距離によって被写体そのものの形が変化して見えてることがあります。広角側では歪みが強調され、望遠寄りでは見た感じに近くなります。やはり、水墨画作家の作品にはレンズによる特性の変化は描かれている作品は少なかったです。人間の目で見た情景として表現されています。ここは、とても感じる部分でしたね。
写真と水墨画の共通点
広大な国立新美術館のギャラリーに飾られている作品をひとつひとつじっくり拝見しました。その中で水墨画作家から抱いた印象は「自分の想いを表現し鑑賞者(受け手)に届けたい」という熱意です。一筆ずつ丁寧に描かれていることが伝わってきました。写真も水墨画も表現者としての観点や意識に極端な違いは無いことを学ぶことができました。
以前、日本版画会の美術展にも訪れましたが同じような感覚を抱きました。写真も版画も水墨画も変わらずに、作品を通すことで表現者という部分で想いを共有することができるのですね。新たな創作意欲を生み出してくれる有意義な時間となりました。
公益社団法人日本南画院の歩み
南画(南宗画)は、唐(中国)の王維に始まるとされます。わが国には江戸時代にもたらされ、精神性をより重視しつつ、大雅、蕪村、玉堂、木米、米山人、文晁、崋山、竹田等により日本独自の南画の基礎が築かれました。
明治に入り、田能村直入、幸野棋嶺により明治十四年京都府画学校が設立され、直入自ら校長となりました。続いて明治29年、東京に於いて児玉果亭、野口小蘋、小室翠雲、松林桂月により日本南画会が京都に於いて直入、鐵斉によって日本南画協会が設立されました。やがて大正10年、三井飯山、河野秋邨、小室翠雲、池田桂仙、水田竹圃、矢野橋村等により最初の日本南画院が創立され、全国の南画家が結集、発表と研究の場を持つことが出来ました。
戦中戦後、南画家の作品発表の場は多くありませんでしたが、昭和35年(1960)5月20日京都に於いて、文化勲章を受章した松林桂月、芸術院賞を受賞した矢野橋村、創立理事長となった河野秋邨を中心として社団法人日本南画院が結成されました。
2010年(平成22年)内閣府認定のもと6月1日、公益社団法人化し、さらに公益性のある団体として更なる発展を期しております。
その間会長は松林桂月、矢野橋村 河野秋邨、河口楽土、直原玉青、町田泰宣と継承され、理事長も河野秋邨、直原玉青、池武、渡辺悟仙、町田泰宣、潮見冲天と引き継がれ、現在に至っています。
百年近い歴史を通し、日本南画院は手法的にも日本風土並びに世界各国の風土の中により多くの素材を求めながら東洋美術の精粋と言われる水墨画、墨彩画の研究に努力致しております。
URL
写真による水墨画的表現
会期
期間 : 東京展:平成28年3月16日(水)~3月28日(月)午前10時~午後6時
京都展:平成28年4月19日(火)~4月24日(日)午前9時~午後4時30分
大阪展:平成28年4月26日(火)~5月1日(日)午前9時30分~午後4時30分
会場 : 国立新美術館(六本木)
〒106-8558 東京都港区六本木7丁目22-2
http://www.nact.jp/
最終日は午後3時、入場は午後2時30分
アクセス
最後に
日本南画院展覧では白黒(モノクローム)だけではなく、赤や青や金色などの色彩も垣間見れました。筆者は水墨画に深い造詣がありませんゆえ受付をされている関係者様に観覧後の疑問点をご質問させて頂きました。水墨・墨彩画は黒一色だけではなく効果的であればその他の色を使っても良いようです。最近は金色が流行っているとお聞きしました。色彩を追加するか、どの部分に使うかどうかだけでも表現者には悩みどころですね。貴重なお話しを聞くことができ勉強になりました。今後も写真とその他芸術・アートの共通点や違いを感じてゆきたいと思います。