写真作家として「ZEN展 / 東京都美術館」の美術展在廊を終えて
アート・コミュニケーション
目次
2017年8月14日(月)~ 8月20日(日)まで東京都美術館で開催されていた「第15回 ZEN展(自然と禅)」 。写真の展示だけではなく、書・日本画・水墨画・油彩・水彩画・パステル・アクリル・立体・パフォーマンス・ビーズなどの重層的な美術展でした。この記事では、筆者がZEN展を通して感じた写真展と美術展の相違点と一致点を考察しながら振り返ってみます。
URL
- 第15回 ZEN展 (自然と禅) / 東京都美術館での展示会のお知らせ
- ZEN展 | 東京都美術館 | 銀座 | 公募展の開催 (自然と禅がテーマです)
- 東京都美術館(Tokyo Metropolis Art Gallery)
「ねこがいちばんすきなの」という可愛らしいご来場者様が名刺を気に入って持ち帰ってくれました。お姉ちゃん、ありがとう。 (※ 親御様に撮影許可を頂いています)
良い出会いを求めて
ZEN展に出展した目的は他者との繫がりでした。様々なフィールドで創作活動を行っている作家・アーティストの方に物事の見方や創作に関する考え方をお伺いしてみたいと考えたのがきっかけです。良い出会いは3つあります。1つめが「人との出会い」。2つめは「チャンスとの出会い」。3つめが「考え方との出会い」です。今回は人との出会いに恵まれた美術展となりました。
見る喜び、知る楽しさを抱く美術展
写真というメディアは複製が容易いという特徴があります。油彩や立体作品などのようにアーティストが1点ずつ制作するのではなく、写真の原本から何点かが焼きましされるものです。それゆえ、鑑賞者の方は無意識的に写真より絵画やイラストの原画などの方が希少性が高いと認識しているはずです。この部分は写真もエディションナンバーや作家のサインで対応可能なのですが、多岐にわたるアーティストの優秀な平面作品と立体作品が混在する美術展ではないと気付けない鑑賞者の意識でした。
ポピュラリティーとアーティスト
写真展・美術展に関わらず、マネジメントの観点からグループ展を成功させる為には、ある程度のフォロワー数(ファンの数)が多くポピュラリティーを持っている作家を招待することが重要です。ただ、オールスターのような形ではかえってつまらなく、その中にあまり人目につかず才能が埋もれてしまっている人や、味のある作家を入れていくバランス感覚も大切です。その点、ZEN展は、ジャンル、派閥、流派、国籍を問わず広く公平に開催する事を信条としています。東京都美術館という舞台と合わせて、作家自身の芸術活動を活性化させ、鑑賞の体験を深めるには素晴らしい環境でした。
ZEN展 理事長 永森様が撮影してくださった1枚
求める場所はきっと一緒
現代の作家やアーティストは良い作品を作っていれば作品が広まっていく、または売れるという時代に生きているわけではありません。大衆性や流行を読み解く経営者としてのセンスも必要とされます。ただ、作り手は「良いものを作るだけでいい」とポピュラリティーを低く考えがちです。しかし、ZEN展に出展していた作家達は自らが行動し、つくる喜びや伝えられる幸せを体現していました。そんな創造と多くのエネルギーに溢れた、作家・アーティスト・鑑賞者の共生の場に、ほんの少しでも身を置けたのは貴重な経験となりました。
次の楽しみは銀座選抜展へ
おかげさまで、来場者による投票により2018年の銀座選抜展に繋がったようです。まだそれまで時間がありますので、良くして頂いたZEN展 五味様からお誘い頂いた、次回の「埼玉近代美術館」への出展を検討しています。ZEN展の受付や働かれていたスタッフの方々は、皆さんアットホームであり素晴らしい接遇で、作家やアーティストを尊重する自由な時間が流れていました。ゆえに、再度出してみようかなと考えることができるのでしょうね。
最後に
お恥ずかしい話なのですが、出展作品が輸送中に額の中で大きくずれてしまい、最終日の1日前まで意図した展示方法にはなっておりませんでした。せっかくの機会にミスをしてしまい残念な気持ちを抱いていました。
しかし、一緒に手伝って直してくださった芸術大学出身の方や、布に可愛らしい動物の絵を書かれる方、そして、ダンスで一生懸命に自分を表現している方などと多くお話しすることができ、とても素晴らしい時間となりました。”同じ好き”を共有できる時間は素敵ですね。
写真家・フォトグラファーの方は、写真展だけにこだわらず美術展への出展もお考えになってみると、より楽しめるかもしれませんね。鑑賞者の方々、出展者様、関係者各位様、ありがとうございました。