テクノロジーの発展とインターネットの歴史による表現者たちの立ち位置
いまを生きる
目次
小さい頃は時間がゆっくりと過ぎ去り、授業時間は永遠に続くかのような感覚でした。しかし今は忙しく働いていると、1週間、1ヶ月と走馬灯のように過ぎ去っていき気が付くと半年、1年と経ってしまうかのようです。そこで、「今」を掴むために、過去を振り返り現在を見つめ近未来を紐解いてみたいと考えました。現代に生きる表現者達は今にして、どのような立ち位置にいるのでしょうか。
1.パーソナルコンピューター革命
1975年から始まり1995年までの20年間がいわゆる「パーソナルコンピューター革命」でした。1995年はWindows 95の発売や、ISP(インターネットサービスプロバイダ)の急増に伴う料金の低廉化によって、企業や一般層にインターネットの認知が進みました。当時は電話回線を利用したダイアルアップ接続がメインで、回線速度は最速でも28.8Kbpsと画像の読み込みに時間がかかっていました。表現者にとってはまだ魅力的な舞台が形成される前の段階でした。
2.インターネット革命
1995年から2015年の20年間は「インターネット革命」と呼ばれる私たちの生活が大きく変化した期間です。1996年には日本で初めてのポータルサイト 「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始しました。日本における当時のインターネット普及率は3.3%でした。1999年になるとADSLが登場し「2ちゃんねる」が開設されるなど現在の礎が築かれていきます。2000年代に入ると「Google」が日本語による検索サービスを開始しインターネット普及率は10倍の37.1%となりました。
3.モバイル・スマホ革命
インターネット革命と同時期の2007年から起きた「モバイル・スマホ革命」。主役の座はパーソナルコンピューターからスマートフォン・タブレット端末に変わってゆきました。モバイル端末の登場により、人々はいつでもどこでもインターネット接続が可能な時代に。FacebookやTwitterなどの各SNSも活況をみせ、世界の人々と個々で混ざり合うことが可能となりました。表現者にとっては国内だけに縛られない魅力的な舞台が用意されたことになります。
4.フィルム写真の終焉とデジタル一眼レフカメラの登場
多くのファンがいたにも関わらず銀塩写真が主役を明け渡した理由は、デジタル一眼レフカメラの需要がフィルムカメラの需要を上回ったからです。筆者も少年時代には父のフィルムカメラを使わせて貰っていました。銀塩写真は味わい深い表現ができましたが、撮影者が移行した理由はデジタル一眼レフカメラの利便性には敵わず、懐古主義と捉えられてしまったからかもしれません。デジタル一眼レフカメラの登場によりフィルム写真(銀塩写真)の最盛期は終焉を迎えました。
5.主役の流れ – ミラーレスカメラへの移行期
フィルム写真(銀塩写真)から主役の座を奪ったデジタル一眼レフカメラはこれからもずっと主役で居続けることは可能でしょうか。おそらく、今後5年ほどでAPS-C機の一眼レフはミラーレス一眼に置き換わっていくのだろうと思います。さらには、10年もしないうちにフルサイズ一眼レフもミラーレス化するはずです。フィルムでなければならない、デジタル一眼レフカメラではなくてはならないという層は少なく、表現者たちは自分の意図通りの成果が出れば、スマホでもデジタル一眼レフカメラでもミラーレスでも構わないはずです。
- ミラーレス一眼カメラ – Wikipedia
- 東京オリンピックではカメラマン席にミラーレスカメラが並んでいると思う
- CP+ 2017 – Fujifilm Interview: ‘We hope that the GFX will change how people view medium format’
6.カメラが空を飛ぶ時代 – IOT ドローンの登場間近
10年ほど前にカメラが空を飛ぶことを想像した人がどのくらいいるでしょう。2017年5月には小型軽量のカメラ付きドローン「AirSelfie」が発売されました。撮影は人が行うものが当たり前だった時代は、いつの日かAIや無人で行うことが当たり前の日が訪れるのかもしれません。スタンドアローン型ではなくネットに接続されたIOT型のドローンが空を飛ぶようになる。まだ発展途上段階ですが現在は時代の変革期なのだと実感しています。
7.一億総表現者時代
1975年~1995年のパーソナルコンピューター革命を経て、1995~2015年のインターネット革命を終え、2016~2035年の今後20年間に訪れるIOT(ネットの現実化)革命の中では、センスがあれば誰もが表現者になることができる時代です。アートやクリエイティブは特定の人のものではなくなっていくのだろうと思います。スマホを活用すればどこでも気軽に写真や映像を撮れるようになってきたからです。自分の作品を海外に発表することも、世界の人々と繫がり合うことも、最新テクノロジーを駆使し見たことない映像を作ることもできる時世です。
8.写真・映像は言語・国境を越える
インターネット革命を終えるまでの時代は、写真家やアーティストは自分の表現によって社会を啓蒙するという役割が強かった印象を受けます。今はSNSの発展により、複数のタイムラインの世界線を見ることが可能な時代となりました。現代はあなたと生きる、共に生きていくという流れにシフトしていっているように感じます。写真や映像には言語が必要ありません。国境さえも簡単に越えられるのです。ほんの十数年前まではできなかったことが誰もが簡単にできます。私たちは面白い時代に生きているのです。
9.アイデア次第で楽しみ方が無限に広がる現在
色んな人々に作品を見て貰う機会を増やしたい方はブログやSNSを開設してみましょう。日本だけではなく他国のファンの方が生まれるはずです。写真展も良いですね。カメラやレンズなどの機材もNikonやCanonなどの純正で揃えることもできますし、最新のミラーレスカメラに年代物のオールドレンズをつけて遊ぶこともできます。新しいものばかりが優れているということでもありませんものね。ドローンを活用し空撮にこだわることもできます。全てはアイデア次第です。まだ始まったばかりですから。
10.世代別の異なる世界観
先日、熱海花火の撮影を終えた後に焼き鳥屋の前で並んでいました。そこには4歳か5歳くらいの女の子が、iPhone7を手にYouTubeの映像を真剣に眺めていました。日本語も英語もよく分からないはずなのに、画面をタップしスワイプして自分のお気に入りを簡単に見つけていたのです。筆者の少年時代とは異なる世界観に感じました。今後もインターネットや写真・映像に関する新しいテクノロジーが私たちの生活に大きな影響を与えていくことが予測されます。時代の変革を感じながらも、感度を高くしてより楽しんでいくことができれば素敵ですね。